黒猫眠り姫〔上〕[完]

それから、走って家を出た。

歩きながらぼーっとする。

雨は勢いが強くなるばかりで、

体は冷たくなる。気づくと知らない

土地にいた。雲が厚いせいで、夜に

なったのかもわからない。

ふと足を止めた。全く知らない住宅街。

近くにあった公園の入り口で腰を下ろした。

涙の変わりに大粒の雨が顔を濡らす。
 
髪も自然とストレートになる。

寒さに身震いがした時、急に雨がかからな

くなった。顔を上げると綺麗な顔をした茶髪の

男が、傘を差して立っていた。

「どうしたの?こんなとこいると風邪ひくよ。」

「・・・・・・・・」

「まさか、しゃべれないとか?」

「・・・ほっといて。」

「ほっとけるわけないよ。服も濡れてるし、

とりあいず、僕のうちにおいで。」

「知らない人に着いてくなって学校で

教えてもらわなかったの?」

「?よくわからないけど、そんなこと言ってる

場合じゃないよね。家に帰れないんでしょ?」

「だから、あなたには、関係ない。」

「じゃ、今日から僕が君の飼い主。

それなら文句ないでしょ。小さい頃から、

猫飼うのに憧れてたし、君は僕の家で

雨宿りも出来る。来たいときにきてくれれば

いいよ。」

そういってあなたは私に笑いかけた。

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