黒猫眠り姫〔上〕[完]
だから、人の壁のことには敏感なんだ。
湊も桐も菜穂ちゃんも尚もきっと私の
知らない彼らがある。でも、傷口に触れ
たらいけないのは自分のことからも分かる。
黒い世界が広がり周りに誰も居なくなる
夢を見た。一人っきりの世界は、真っ暗
で息が苦しい。心の変化はもう起こって
いた。ただ、素直に認めることができない。
どうしようもない苦しさと切なさが胸を
締め付けては、心に隙間を作る。誰かに、
この気持ちを理解して欲しいとかそんなん
ではないけれど、気づいて欲しかった。
今までとは違う。何かに私は気づくことも
出来ず目を開いた。
窓から見る自分は泣きそうな顔をしていて
とんでもないぐらい不細工だった。
歪んで見える窓の外から見える空は、自分
の心境とは裏腹に梅雨の時期珍しく晴れて
いた。太陽が眩しいほど自分が淀んで見えた。