黒猫眠り姫〔上〕[完]
「誰かが、信じて待っていてくれる
っていうのはすごい勇気になる。」
「振り返ることに怖いと思ってるのは、
私もだから分かるの。どうしても、こ
れは自分の問題だから、自分で答えを
見つけるしかない。」
「鈴って強いんだな。」
「・・つよ・・・く・・なんて・・ない。」
「私は、尚みたいになれない。」
「・・・・・・・・・」
「全然駄目なの。もう迷宮に入って迷子。
自分自身が分からない。どうしようもない
こんな自分が一番嫌いなんだ。」
「鈴。」
「私は尚よりもずっと弱いんだ。今だって、
自分じゃ何も出来ないくせに人には偉そう
に言ってばかり。」
「そんなこと」
「わかってるんだ。頭では、この状況
わかってるんだけど、心が追いつかなくて、
尚みたいに優しくされるなんて全くなくて
こんな自分消えてなくなりたい。」
「言うな。」
「・・・・・」
「そんなこと言うな。」
鋭く向けられた瞳は、怖いものとは違って
寂しそうだった。
「・・・っ・・・ぅ・・」
「鈴が居なくなっていいわけない。鈴少な
くとも鈴には笑ってほしいと思ってるヤツ
がいる。」
「?????」
「だから、消えるとかそんな怖いこと
言わないでくれ。」
消え入りそうな声と一緒に見た顔は、
今まで見たことない尚の辛そうな顔に
心はどんどん沈んでいく。