黒猫眠り姫〔上〕[完]
いつまでも逃げるばかりで向き合わない私は、
やっぱりどうしようもない人間なんだ。
バイクに乗ってしばらくして学校に到着した。
「ほんとに送らなくて平気?」
「大丈夫。」
「そっか。じゃ、気をつけて。また、明日。」
「うん。尚こそ気をつけて。」
「あ、うん。」
「ばいばい。」
そう言うと、バイクは学校からどんどん遠ざ
かっていった。
ケータイを開くと、8時を回っている。
とぼとぼ歩きながら、考えることは、自分の
情けなさや、夜ご飯の献立。
家に着く頃には、9時になる前だった。
ドアを開けると、桐が玄関に立っていた。
「あっ、湊帰ってきた。」
鋭く見える目はなんだか怒っている。
「ただいま。」
「おかえり。遅かったね。」
「うん。ごめんね。」
「鈴、おかえり。」
「湊。ただいま。」
「よかった。なんかあったのか心配だった
から。」
「えっ、ごめん。」
「いいよ。でも、これからは、遅くなるとき
は電話でもメールでもいいから連絡して欲し
いかな。ご飯も冷めちゃうからね。」
「はーい。」
「ったく心配どころか探しに行こうかと思った
から。」
「ごめんね。桐。」