黒猫眠り姫〔上〕[完]
深まるのは、過去に囚われたみんなの
心だった。謎に包まれたのは、湊だけ
ではなく、桐や菜穂ちゃん、尚の過去が
暗闇にあることで、自分のことのように、
みんなは、私の心配をする。
だから、心配されることに戸惑い過ぎた。
心配なんてされたことなんてなかった。
湊に出会うまでは、ずっと一人ぼっち
だったから、よくわかんなかった。
心配されるのがどれほどのものなのか。
自分まで苦しくなるぐらいみんなの瞳は、
揺れているんだ。
さっきも、平気そうな顔しながら、桐も
湊も心配してくれた。
だから、もうどうしていいかわからなくて
苦しくなった。
心配させたいわけじゃない。
だから、自分のせいで誰かが、悲しむこと
の怖さを初めて知った。
今までで、一番怖いと思った。
謎に包まれたみんなの過去がどうか、
いつか知られますようにと願った。
みんなが、過去からの自縛に解けますように
と願う半分自分の心は、あまりにも掻き乱さ
れていた。