黒猫眠り姫〔上〕[完]
「鈴がそばにいてくれて一緒に暮らしてて
どこまでも救われてるよ。」
「嘘。」
「何で嘘つかなきゃいけないの。」
「だって、何にも湊にしてあげてないよ。
ご飯だってろくに作れないし、湊が仕事
頑張ってるときも私は何にも出来ない。」
「何にも出来ない?そんなことないよ。
ご飯一緒に食べてくれる、仕事の時だって、
近くで、見てくれたりそれってすごく、
力になるんだけどな。」
「・・でも。」
「でも?」
「優しさが大きすぎるよ。」
「????」
「湊にばっかり優しくしてもらって、何か
怖くて。」
「何で?」
「今までになかったことでわかんなくて。」
目から涙で溢れる。
「鈴。」
そう言って、湊は抱きしめてくれた。
外の空から見えるのは、雲で溢れた暗い夜空
だった。しくしく流れてきた雨はまるで、
私の頬にかかった涙と似ていた。