黒猫眠り姫〔上〕[完]
そう言っていつものような顔で、
いつもみたいな声で、
湊が心なしか大きく見えた。
心の中が少しだけ晴れた気がした。
「鈴が、聞いてね。」
「うん。もちろん。」
「鈴、やっぱり明日はサプライズしようか。」
「うん。桐の驚く顔見たい!!」
「鈴って、桐と仲いいよね。」
「うん?そう?たしかに、最初の時よりは、
話すし仲いいのかな?」
「良かった。桐は、唯一俺の信頼できる、
友達だからね。」
「そうなの?」
「うん。不器用でバカだけど、人の心とか
確実に痛みに気づいてくれる空気の読める
人だからね。」
「そうだね。湊のことすごく心配して、
すごく大切だって言ってた。そんな風に、
言って信頼できる友達が居るっていいなって
思った。」
「桐は、鈴のこともそんな風に思ってるよ。」
「そうかな?」
「うん。桐のことだから絶対に思ってるよ。」
桐のことについて話す湊は、なんだか嬉そうで
こっちまで嬉しくなった。
桐をすごく大切にしているのは、わかって、
二人とも言い合いしながらも信頼した友達で
関係が崩れることはないんだと思った。
毎日来る桐が、どれほど湊を心配している
かもなんだかわかった気がした。