彩葉唄
その名は、彩葉童子
時は平安。
今宵は月が完全に満ちた、満月の夜。
静寂の夜を騒がすのは、一つの盗賊団。
「向こうに行ったぞ!」
「捕まえろ!」
朝廷の者達が必死に追っている人物は、盗賊団の副首領。
塀の上を駆けながら、月影に映える白銀の髪をした男は月色の瞳を細めて微笑した。放たれる矢を軽快な動きで避ける男はこう言った。
「私の名前は彩葉(いろは)童子
捕まえれるものなら、捕まえてみなさい」
綺麗に整ったその顔には、妖艶な笑みが浮かんでいた。