彩葉唄

霧夜は頭をひとつ振り、思考を一時中断すると前を真っ直ぐ見据えたまま呟いた。

「もうすぐ‥着きそうだな‥」

周りにあった木々の数が少しずつ少なくなっていき、道が広くなっていく。
ずっと疾走していた霧夜は、気を抜けば倒れてしまいそうな状態だったが、目的の場所に着くまで走りつづけた。

「っ‥着いた‥‥」

彼はそう呟くと、駆けるのを止め、眼前に広がる澄んだ湖に近寄った。
月が出ている刻に此処へ来ると、水面に月が映り、まるで月が地に堕ちてきたようなのだ。
まだ幼子だった霧夜と彩葉は、此処を『月が地に堕ちる場所』とよんでいたのだ。
 
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