彩葉唄

「何で‥彩葉!」

名は一番短い呪で、その者だけに与えられた大切なモノなんだと、誰かが言っていた。名を呼べば、その呪を唱えれば、きっとその者は答えてくれるはず。
答えてほしくて、自分を見てほしくて、彩葉と‥名を呼んだけれど、彼は答えてくれない。

「彩葉‥‥」

ただ ただ、湖の水面を見つめながら無言でいる彩葉。どれくらいの時間そうしていたのか、そんなことはわからない。

霧夜は再び名を呼ぼうと口を開いた時、震える小さな声で彩葉は告げた。

「霧夜には教えてあげる。私の秘密‥」

振り返らないから彩葉がどんな表情なのかは見えない。だけど、霧夜はそれで良いと思った。
ただ、直感でそう思ったんだ。
 
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