愛してる、ただそれだけで



彼が携帯電話を置いて
出て行くときは、何も言わない。


今日のようにシャワーを浴びていたり、寝ていたり
あたしが気付かぬ間に出て行ってしまう。




―…彼はどこで、誰と会っているんだろう




そう思ったときに、分かってしまった。

彼に聞きたくとも、それは出来ない。


離れているときに唯一の繋がりとなる物は、
今ここにあるんだから。






携帯電話を盗み見るなんて、
そんな卑怯なことはしない。


嫌な現実を自ら見ようなんて思わない。


きっと彼も、
あたしのそんな性格を
分かっているんだろう。



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