ねえ、もう一度。


「じゃあ、あとは比奈がんばって!」

「ちょ、聡子!!」


なんて薄情なんだろう。
するりと私の伸ばす手をかわすと
聡子は颯爽と走り去ってしまった。


さて。
一体わたしはどうすれば…。


聡子と入れ替わるように
奏がどんどん近づいてくるのが分かる。


あぁ、いったいなんでこんな羽目に。


「…逃げよう。」


普段だらだらしていても、どちらかというと運動が得意な私はとにかくその場から逃げるという選択肢を選んだ。


奏に捕まる前に、家に逃げ込めばいいんだ!



そうと決まれば、行動!
鞄を落とさないようにしっかりと握り、
走り出した。


「比奈!」

「!」


奏の私を呼ぶ声。
でも、振り返ることなんてできないよ。


出来るだけの速さでその場を立ち去ろうとする私。


「絶対…やだ。」


お化粧をしたって結局、奏には認めてもらえない。
だって、奏の周りには私以上に綺麗で可愛い子がたくさんいるんだもの。



無性に悲しくなって泣きたくなった。





「お、おい!比奈」

「え?」



涙が目に溜まって前が見えない。
でも逃げなくちゃ。

体はただただ前へと進んでいた。
そんな私を呼び止める奏の声。


プップー!!!!


奏の声とほぼ同時。
大きなクラクションの音が鳴った。



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