ねえ、もう一度。




私の体をこれでもかというくらい強く抱きしめる奏。


「ご、ごめんなさ…」


死を間近に感じた私。
目には自然と涙が溜まっていた。


…怖かった。


「比奈」

そんな私をあやすかのように奏は何度も何度も私の頭を撫でる。もう大丈夫、そう言い聞かせるように。

その手が暖かくて私はぐっと涙を堪えた。





「…なんで逃げた?」

「え?」

私が落ち着いてきたのを確認した奏はひょっこりと私の顔を覗き込む。




…そういえば忘れていた。
私は奏から逃げていたのだ。

がっちりとホールドされた私の体。
逃げることなんてもう、できない。




「…だって」

「なんだよ」



言える訳がない。
恥ずかしかったのだと。
奏に馬鹿にされたくなかったのだと。


他の人ならまだしも、奏にだけは。




だって、の後からなかなか言葉が出てこない私を見かねた奏が口を開く。


「じゃあ、質問変えるわ。」

「え?」



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