ねえ、もう一度。
「比奈!今日放課後教室待機!」
「え、いきなり何で」
「良いから、良いから。わたしに任せなさい!」
聡子は鼻歌を歌いながら、
なんだか上機嫌。
…楽しそう。
まったく意味が分からない!
可愛くなりたい
奏に認めてもらいたい
でも、出来ない。
モヤモヤした感情が私を支配する。
私以外の女の人の隣で笑わないで
ずっと私の傍にいて
そう言えたらどんなに楽だろう。
でも、私には言う資格は、ない。
「比奈、そんな顔しないで」
「…うん」
結局、奏と目を合わせることなんて
出来るわけもなく、そのまま昼休みが終わった。
これじゃあ、いつか本当に愛想つかされるな、私。
はあっと今日何度目か分からない溜息を落とした。
そして放課後。
私と聡子以外誰もいない教室。
「ねえ、何するの?」
「…おもしろいこと♪」
そう言うと聡子は自分のバックから
大きな鏡とメイク道具を取り出した。