白の世界
そういいながら、一輝の面影を思い出してせつなくなってしまった。

一輝の部屋に行った日から、あたしたちは今まで以上に会うようになったし、部屋にも良く行くようになったし。

一輝のバイクのうしろのシートに座るのが大好きなのに。

ギターをひく、一輝の横顔が忘れられないのに。



どうして、裕典に言えないのだろう・・・。

どうして、いつものように、言えないの?

悪いこと・・・、じゃないんだよね?


裕典とあたしは、親友なんだから。



「咲?」

「・・・。」

「おい、咲。」

「あ、ああ。ごめん。考え事してたみたい。ごめんね。」

「やれやれ。ほれ行くぞ!」

裕典はあたしの手を取って、マクドナルドを出た。

そうえいば、裕典にこうやって手を取ってもらうことは何度もあったけど、一輝と手をつないだときの、あのときめきってない。

でも、いつもあたしの情緒が不安になっているときに、手を取ってくれているのは、まぎれもなく裕典なんだけど。

前に進めなくなった時、いつも手をひいてくれるのは裕典なのに。





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