白の世界
その日の夜、スタジオでメンバーに名古屋行きの事を告げた。

「そうか、まあ仕事だから仕方ないし、うちのバンドのギターは咲しか出来ないんだからさ。」

ミホはそういって笑ってくれた。

「そうそう、ライブの時は都内にくれば良いし、スタジオもライブの前の日に入れば、なんとかなるよ。

加奈も笑顔で、そういってくれた。


「心配しないで、行ってこい、名古屋!!」

「そうそう、名古屋でもライブ出来るように、ブッキングよろしく。」


なんて、前向きな二人なんだ、と思ったが、彼女たちの優しさがとてもうれしかった。


「うん。じゃあ、名古屋がんばってくるよ。」

あたしも笑顔でそう答えた。



「でもさ、一輝くんは??きっと寂しがるよね。」

「ね。やっと一輝くんに決めたのに、これじゃあね、ちょっと寂しいよね。」

「うん。一輝にも、ちゃんと言う。この際、彼女にしてくださいって、頼んでみようかな。」

「だね〜、それがいいんじゃないの?いい加減はっきりさせれば。」

「明日、会うから、ちゃんと伝えてみるよ。」

「きっと、大丈夫だよ!」


二人の笑顔に助けられ、少しだけテンションが上がった。


でも、とても不安だった。

一輝に伝えるのが、とても不安だった。
< 43 / 47 >

この作品をシェア

pagetop