悩める乙女と冬の夜
【3】
―午後11時55分。
私たちが会社を出た時間は、ギリギリ“今日”だったのでした。

「伊藤さん、本当にありがとうございました!終わらなくて諦めちゃうところでした」

はー、と、思わずため息が出た。ため息が白いことで、冬を実感する。

「気にしなくていいよ。三橋が頑張ったから」

さり気なく気遣われた。
伊藤さんて、こういう人だったんだ。普段私と話をするときは、自然に私に合わせてくれていたということがわかって、胸が苦しくなった。
そんなことも知らずに私…。
周りのこと、全然見えてないんだ。
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