花びら
別れ
何本か電車を見送ったあと彼が切り出した
「明日、朝早いんだろ?
そろそろ帰るか…」
その言葉は別れを意味していることを私たちは分かっていた
離れても大丈夫だと言えるほど
未来を約束できるほど大人じゃない私たち
どちらかが夢を諦めれば…
そんな無茶なことが出来るほど幼くもなかった18歳の春

願いは進むこの私たちの道がいつか交差できらなら
私たちはまた恋に落ちるだろう

電車がホームに入ってきて
二人の手が離れる
二度と触れられないかもしれない
今なら戻れる
そんな私の背中を彼はポンと押した

電車に乗り込んで振り向けなかった
背中から頑張るからと彼の声が聞こえてドアが閉まった
頑張れなんて彼は言わない
いつだってそう、ただ側にいて黙々と自分のことをする
私は置いて行かれそうで必死に頑張った
そんな人だった
振り向いたら、彼はいつもの笑顔で手を振る
動き出した電車
電車を追うなんてしない人なのに
それでもだんだん彼は小さくなっていった

これが初めての別れきっと別れなんて何度も繰り返すのに
きっとこの別れは忘れることはないだろう
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