花びら
気づけば1時近くになってしまっていた
「里緒、ごめん。こんな時間になっちゃって。親心配するだろう、送るよ。」
そう言って恭介が立ち上がった。
帰りたくない…
そんなこと言えないから私はただ頷いただけだった

恭介は待ち合わせ場所まで自転車で来ていた

居酒屋から私の家までは歩いて30分くらいだったけど
恭介は大学の近くに住んでいるのだろうから1時間以上かかるはずなのに…
それなのに会いに来てくれたなんて思うと、つい期待してしまう
30分なんてあっと言うまで
すぐに家の前に着いた。

「懐かしいなぁ。里緒んち。」
そう言ってもう暗くなった私の家を見る
「恭介、今日はありがとう。楽しかった。」
「俺も。久しぶりに会えて、里緒の顔見れてよかった。大学院こっちならまたいつでも会えるし、またごはんに行こうな。」
そう言って恭介は自転車に乗る
「気をつけてね。遠いのにごめん。」
そう言う私の頭をコツンとと弾いて恭介が笑う
「会いたかったから、話したかったからいいの。じゃぁまたな!」

恭介の後ろ姿を見送る。
恭介が角を曲がって見えなくなった瞬間
私の目から涙が溢れ出した。

恭介…
会いたかったから、話したかったからなんて言ったら私は期待してしまうよ
恭介…
恭介もいつかを信じてた?


部屋に戻りカバンを開けるとケータイが光っていた

着信が4回
1回はお母さん
3回は保岡サン…

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