花びら
正門を通り過ぎて丘へと向かう
坂道を登りきり顔をあげるとそこにはキレイな街並みが広がっていた
大好きな場所
ここにも沢山の思い出がある
お互いの気持ちを確かめて
初めて手をつなぎ
初めてキスをして

あの桜の下が出逢った場所なら、ここは始まった場所
私たちの出発地点
だからここに埋めようと思った
本当はいけないことだと分かりつつ
私は箱を置きカバンから小さな園芸用のスコップを取り出す
ふとカバンの中のケータイに気づく
着信を知らせるランプが光る
画面には保岡さんの文字
通話ボタンを押した瞬間
「里緒」
『里緒菜』
その声に振り向きケータイを落とした
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