花びら
坂をくだる。だんだんと加速して行き、正門の手前で止まった。
葉も落ちた桜の木を見上げている男の子、視線に気づいてこちらを振り向く。目があって、私の胸は全力で走って来たのに合わさってさらにドキドキとした。
今にも泣き出しそうな顔で笑い、私の方へ歩いてくる恭介。
ふわっと恭介の腕がまわり、恭介の胸の中に入る。
「ありがとう。里緒…好きだよ。ずっと言いたかったこの言葉。好きだ。」
私の腕も自然と恭介の背中に回る。
「恭介…恭介が好き。誰よりも何よりも。今なら相手の邪魔になるなんて思わない。今なら歩いて行ける恭介と二人で…」

4年ぶりのキス
ずっと夢見てた
後悔はしてないってずっと言い聞かせてた。
会いたくて会いたくて、本当は意味もなくこの坂を上った。
偶然会える気がしてた。
出会った場所…私たちは運命だって小さな子みたいにそんな夢を見てたから。
会いたくて会いたくて…
今その人の腕の中にいる。
その時、風が吹いて雪がちらつき始めた。
私たちは手を繋いで坂を下った。
言葉はいらない、繋いだ手から伝わる温もり、もう離さないと決めた。
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