ひなたぼっこ~先生の、隣~
「ちんたら、歩いているな!授業遅れるぞ!?」
そう、怒鳴り声で言ってきたのは、数メートル先にいる担任だった。
「…はい」
少し声を張り返事をすると、さっきよりも足を速めた。
いくら機嫌が悪いからって、今のは…
「妹尾に八つ当たりは、やめて欲しいよな」
「そう、八つ当たり…って」
いつの間にか、隣にいた高橋先生。
驚いて立ち止まりそうになったが、"歩きながら話すぞ"と先生に背中を押され、再び歩き出す。
「数学準備室で昼寝してたら、ギリギリになっちまった。教師が授業遅れるなんて、あいつらに何言われることやら…」
苦笑いしながら話している先生を、横目でチラッと見た。
ドキン!
すると、ちょうどタイミング良く目が合った。
「お前はまた、中庭でひなたぼっこしてたんだろう?」
ニヤリと笑みを含めながら、先生が言った。
「あんなことで一人でいるの、寂しくないか?安川を誘うとかしたら、どうだ?」
何て言っていいかわからず、首を横に振り答えた。
いつも、中庭にいるわけじゃない。
昨日はたまたまー…今日は、先生を待っていたなんて言えない。
「そうだ。俺も昼休みは、中庭でひなたぼっこでもしながら、昼寝するかな。準備室だと、スッキリしないんだよなぁ」
「!」
泰葉の足が止まった。
「妹尾なら、騒がしくないし…って、どうした?急がないと」
「…ってます」
「ん?今何て…」
「私…昼休みは、中庭にいますから!」
少し声を張り先生に向かって言うと、さっきよりも速いスピードで歩き出す。
驚いて立ち止まっている先生を追い抜き、教室に向かった。
先生が毎日中庭に来てくれるわけじゃないし、さっきのも冗談かもしれない。
だけど、冗談でもそう言ってくれたのが嬉しかった。
明日からも、来るかもわからない先生を待とう。
やっと見つけたんだから。
唯一、先生と二人っきりになれる空間ー…