ひなたぼっこ~先生の、隣~
もうすぐで麻生の家に着くというところでー…
「はなして!やだぁ」
「やめなさい!」
女の叫び声が聞こえた。
「…先生、ここでいいから」
小さな声で言うと、麻生はシートベルトを外す。
「おい…」
慌ててブレーキを踏むと同時に、麻生がドアを開けて降りた。
ギアをパーキングに入れ、慌てて降りる。
女の人が二人、叫んでいる方に麻生は走って行った。
「楓!」
「やだぁぁぁ!離して」
どうやら、母親とー…
「お姉ちゃん!」
麻生の姉みたいだ。
でも、姉の方は興奮状態で泣き叫んでいる。
「近所に迷惑だから、一回部屋に入ろう?」
麻生が優しく姉に話掛けるが、全く耳に入っていないようだ。
「…僕が部屋まで連れて行きましょうか?」
「先生!」
「先生…」
母親が目を見開き、慌てて頭を下げた。
「…お願いします」
小さな声で肩を震えさせながら言った。