ひなたぼっこ~先生の、隣~
パタパタと、廊下を走る。
他の生徒は下駄箱に向かっている中、泰葉は数学準備室に向かう。
先生からメールが来るなんて、滅多にないこと。
それに、二人っきりで会えるのはデート以来。
準備室の前まで来ると、呼吸を整えドアノブに手を伸ばす。
「…失礼します」
扉を開けると、話し声が聞こえた。
「…あれ…妹尾さん?」
聞き覚えのある声で、名前を呼ばれた。
一瞬、体がビクっと跳ねたのがわかった。
「…妹尾」
先生の声がした。
麻生さんの斜め後ろに、椅子に座っている先生がいた。
苦笑いして、申し訳なさそうな表情をしているー…
「妹尾さん、先生に何か用なの?」
ドキン
「え…」
「あ、もしかして実行委員のこと?」
「あ…う…ん?」
何て言っていいか、わからなかった。
理由なんか適当に言えばいいのにー…
今の私は、言える自信がない。
「あ…私、やっぱ今度にします。それじゃ、失礼します」
泰葉は深く一礼すると、逃げるように準備室を飛び出した。