ひなたぼっこ~先生の、隣~
「麻生、もう昼休み終わる」
「大丈夫だよ。次、LHRだから」
「そういう問題じゃないだろ…」
大きな溜め息が、数学準備室に響く。
実行委員会が終わり、次の授業のために準備室に向かおうとしたら麻生が付いてきた。
「ね、先生」
「…何だよ」
授業の準備をしながら、麻生の話を聞く。
「お姉ちゃんがさ、また調子悪いみたいでさ…」
ぴたりと、準備をしている手が止まった。
「今日…来てくれると嬉しいというか…」
麻生の話す声が、さっきよりも小さい。
「…わかった。だから早く、教室戻れ。授業遅れるぞ」
止まった手を再び動かす。
「先生、ありがとう!」
さっきよりも、弾んだ声が聞こえた。
振り返った時には、麻生の姿はなかった。