ひなたぼっこ~先生の、隣~
麻生の自宅に着く頃には、麻生は助手席で眠ってしまった。
…先に主任に連絡しとくか。
ポケットから携帯を取り出し、電話をかける。
「あ、高橋です。連絡が遅くなってすいません、明日からの麻生のことですが…」
『母親の方は大丈夫だったんですか?』
「意識は取り戻されたそうで…今日は少しだけ面会して帰ってきました」
『そうか、良かった…麻生は、私達が修学旅行から戻るまでは母親についててもらうってことで…』
「わかりました」
『あ、高橋先生』
「はい?」
『生徒の家庭の事情に、あまり首を突っ込まないように注意してください』
「…」
『貴方は、ただの教師なんですからね。そこら辺を気をつけていただかないと、後々大変…』
「…わかりました。気をつけます」
電話を切った後、大きな溜息がでた。
「…はぁ」
「…先生?」
助手席で眠っていた麻生が目を覚ました。
まだ眠たそうに、目を擦っている。
「家着いた。明日からは、皆が帰ってくるまでは母親の側にいてあげなさいって学年主任が言ってたから…」
「…ねぇ先生…帰るの?」
「…は?そりゃ…ゎ…」
シートベルトを外した麻生が、助手席から身を乗り出した。