ひなたぼっこ~先生の、隣~
よく晴れていて、絶好のひなたぼっこ日和。
日差しが身体を包み込み、気持ちが良い。
「よいしょ…」
いつもの場所に座り、持ってきたパンの袋を開けた。
ちまちまと、ちぎって食べながらまた考え込んでしまう。
あんな忙しそうな先生に、告白なんかしたら余計に、先生の負担が増えちゃうよねー…
何考えてんだろう、私。
「うまそうな、パンだな」
「!」
頭上から声が聞こえ、バッと顔を上げた。
「高橋先生!?」
さっき呼び出し放送を流していた先生が、どうしてここにー…
先生は窓を通り抜け、泰葉の隣に座った。
「あ…先生、血が…」
さっきは気付かなかったが、先生の口からは血が出ていた。
「あ、あぁ…ちょっとな」
苦笑いしながら、スーツの裾で血を拭おうとする。
「!」
泰葉は慌ててポケットからハンカチを出すと、先生に渡した。
「お、悪いな」
先生はそれを受け取ると、そっと口に当てた。
「…ここにいて、大丈夫なんですか?」
「あぁ。俺の役目は、終わったからな」
役目ってー…
「今は、アイツらの担任の先生が見てくれている」
殴られるのが、先生の役目ですかー…?
「お前が、そんな悲しい顔すんなよ」
ハンカチで押さえている反対の腕が、泰葉の髪に触れた。
「ごめんな。心配かけて」
先生が眉を下げ、申し訳なさそうに言った。
ぶんぶんっと、泰葉は横に首を振った。
「お前に…この顔見られたら、心配かけるってわかってたのにな…なんだろう、心配して欲しかったのかな」
ドクン。
「…っ」
「子供かよ。俺は…」
…そんなこと、言わないでください。
「私、何か冷やすものもらってきます」
「おう、悪いな」
「いえ…」
"先生が好きです"って、言ってしまいそうになるー…
泰葉が立ち上がったのと同時に、校内放送が流れた。