ひなたぼっこ~先生の、隣~
昼休みも終わり、教室に戻ると"高橋が殴られた"という話題でザワザワしていた。
詳しい話を聞くと、校内でタバコを吸っていた生徒を呼び出し、説教をしていたら逆ギレをされて殴られたらしい。
「高橋も、嫌な役だよな」
「かわいそうだよね」
「後で、見舞いに行こうぜ。殴られた顔も拝んでおきたいし?」
「ひど。高橋は悪くないのに」
先生を心配しているのは、私だけじゃない。
…私だけじゃ、ないのかー…
「泰葉!一緒に帰ろ?」
「うん」
久しぶりに、香奈と一緒に帰れることになった。
残りは、立川くんが作ってくれると言ってくれたので、今日からは早く帰れる。
「久しぶりにクレープ食べに行かない?」
「いいよ!」
教室から下駄箱に向かっている間、何度も高橋先生の名前が耳に入った。
昼休みの出来事だったのに、もう学校中に広まっているんだということにも驚いた。
「あ…香奈。昼休みのとき、ごめん。ちょっと、考えごとしてて」
「いいよ!泰葉、実行委員で忙しいのわかってるし」
「ありがとう」
「それよりさ…あ!!」
学校から出て数分、いつもの通学路を歩いていると、香奈が何かに気付いた。
「高橋じゃん!!」
私たちの進行方向から、高橋先生が歩いてくるのが見えた。
外出するときは、いつもはスーツなのに、こっちに向かってくる先生はジャージ姿。
「おーい!」
隣にいた香奈が、先生に駆け寄って行った。
「高橋、何してんの?」
その後を追うように、泰葉も先生の元へー…
「安川か…見回りだよ。見回り」
「珍しいじゃん。しかも、スーツじゃなくてジャージ姿っていうのも、珍しい」
「あ、あぁ。スーツ汚したから、学校に置いてあったジャージに着替えたんだ」
溜め息を交えながら、先生が言った。
口についた血を、無意識に袖で拭ったのかな?
それとも、もっとー…
そんなことを考えながら、2人のやりとりを少し離れて見ているとー…
「!」
先生と、目が合った。