ひなたぼっこ~先生の、隣~
一瞬だけ、申し訳なさそうな表情を見せた先生。
「…」
「高橋、殴られたって本当?」
「あ…いや。ちょっと、ふざけてただけ」
「えー…怪しい」
「うるさいな。ほら、さっさと帰れ。はい、さようなら。」
シッシと追い払うように言うと、先生は学校に向かって歩き出した。
「また、明日ね!高橋」
先生の背に向かって香奈が叫ぶと、振り向かずに右手を上げた。
その背を見送ると再び、香奈と泰葉は並んで歩き出す。
「高橋、いつも通りだったね」
「…ねぇ」
香奈には、ふざけてただけって言ってたけど…本当は…
「あの殴られた跡は、ふざけてたって感じじゃないね。マジ殴りされた」
「え?!」
「泰葉、信じたの?」
「あ…いや…」
「高橋って、生徒を庇うの上手いじゃん?自分が不利になっても、馬鹿みたいに守りそうだし」
「…うん」
香奈がそんなことを思っていたなんて、思いもよらなかった。
「ま、そういうとこが好きなんだけどね」
…え?
「好き…?」
香奈が、先生をー…?
「恋人も、大事にしてくれそうじゃん!あ、みんなには内緒ね」
「…う…うん」
全然、気付かなかった。
帰り道で寄ったクレープ屋でも、香奈はずっと先生の話をしていた。
その間、私はずっと笑顔で相づちを打っていちつもりだったけど…
ちゃんと、笑えていたかな?