ひなたぼっこ~先生の、隣~
放課後、香奈と再び準備室に向かおうとしたとき、立川に呼び止められた。
どうやら、急に実行委員会か決まったらしく香奈とは教室で別れ、立川と泰葉はコンピューター室へと向かうことになった。
「なんか、妹尾さんと会話するの久しぶり」
「え、そうかな?」
「そうだよ。俺たち、実行委員以外では全く話さないじゃん?」
「あ…そっか」
「せっかく同じクラスなんだからさ、実行委員以外でも話そうよ。…って、こんなこと言うの、おかしいか」
苦笑いしながら言う、立川。
「ううん!ありがとう…なんか、嬉しい」
「そう?じゃあ…早速なんだけど」
「うん?」
「今日、実行委員会終わったら一緒に帰らない?」
「…え?」
「実は、傘忘れちゃって…」
窓の外を見ながら、立川が言った。
泰葉も窓の外に視線を向けると、しとしとと雨が降っているのが見えた。
「…うん。いいよ」
「本当?ありがとう」
笑いながら返すと、立川はホッとした表情を見せ笑った。
1時間ほどで、実行委員会が終わった。
窓の外を見ると、どしゃ降りの雨。
「二人で一本の傘に入っていくと、濡れそうだね。やっぱ、俺は濡れて帰るよ」
「え!?ダメだよ、風邪ひいちゃう」
立川と下駄箱でそんな会話をしていると、パタパタと廊下を走る上履きの音が近付いてくる。
「あれ、泰葉!今、終わったの?」
そう話掛けてきたのは、準備室に行ったはずの香奈。
「香奈こそ…」
教室で別れてから、1時間以上は経っている。
「高橋とね、準備室で話してた」
笑顔で嬉しそうに話す、香奈。
「…そっか」
"良かったね"とまでは、言えなかった。