ひなたぼっこ~先生の、隣~
ポケットから車の鍵を出す。
鍵穴にカギを差し込もうとしたときー…
「高橋!」
目を真っ赤にさせた麻生が走ってきた。
「…良かったな」
ふっと笑いかける。
「良かったのかわかんないけど…何かすっきりした!」
清々しい笑顔で答える麻生の表情は、16歳が見せる笑顔だった。
心の奥底に溜まっていたものがなくなり、軽くなったんだろう。
「…高橋…ううん。高橋先生」
「…なんだよ。珍しいな」
麻生に"高橋先生"と呼ばれたことなんか、数回しかない。
「ありがとうございました」
深く、深く頭を下げた麻生。
「…お礼を言われることなんか、何もしてないぞ?」
頭をポンっと叩き、頭を上げるように促す。
「それと、たくさん迷惑かけてすいませんでした」
頭を下げたままの状態で、さっきよりも深く頭を下げた。
「やめろって…何も迷惑だと思ってないから」
「ううん。私たち家庭の問題に高橋…先生まで巻き込んだから」
「それは、俺が決めてやってたことだ。何も迷惑だなんてー…」
「そのせいで、妹尾さんにも酷いことしちゃった」
「…酷いこと?」
「高橋…先生と別れてって言った」
「は!?」
想像もしていなかった言葉に、目を見開き驚く。