ひなたぼっこ~先生の、隣~
「悪いね、お嬢ちゃん。もう売り切れちゃったよ」
「そ…ですか。わかりました」
やっぱり、昼休みに入ったのと同時に来ないと売り切れちゃうんだ。
しょうがない、我慢しようー…
小さく溜め息をつき、諦めて教室に戻ろうとした時だった。
ものすごいスピードで、誰かが横を通り過ぎて行った。
「?」
「おばちゃん!何か残ってない!?」
この声…
ゆっくりと振り返り、さっきまでいた売店を見た。
「残念!さっき、あの子にも言ったけど売り切れだよ」
「マジですか…って、あの子?」
ドキン。
ものすごいスピードで走って来た人物が、こちらを向いた。
「妹尾か!お互い、残念だったな」
ニカッと笑い、高橋先生が近付いてくる。
さっき放送で聞いた声とは違う、優しい声。
「でも、珍しいな。お前が売店に来るなんて…」
「それが…」
ん?という表情をさせ、聞いてくる。
「お弁当を…ひっくり返してしまいまして…」
ボソッと泰葉が言うと、先生は目をパチパチっと瞬きさせー…
「マジ!?コントみたいじゃん!お前、最高!!」
アハハと、笑い出した。
「高橋先生、笑っちゃかわいそうですよ!?」
大笑いしている先生を横目に、売店のおばちゃんが何かを手渡してきた。
「これ、よかったら食べて」
泰葉の手に渡されたのは、鍋で作るインスタントラーメン。
「え…」
「おばちゃん、これをどうしろと…」
笑っていた先生の顔が、今度はラーメンとおばちゃんを戸惑った表情で交互に見ている。
「ここに来る前にスーパー寄ったら、安売りしてたのさ!」
"うふふ"と、得意気な顔をしながらおばちゃんが言った。
でも、そのわりには1個しかくれないー…