ひなたぼっこ~先生の、隣~
困惑
体育祭当日ー…
梅雨の時期だというのに、昨日から晴れていて運動場のコンディションは抜群。
本当は中止が良かったんだけどなぁー…運動苦手だし…
それに…
"体育祭が終わった後、高橋を準備室まで連れてきて!"
と、香奈にお願いされたからだ。
きっと、告白するんだと思う。
でも、先生に想いを伝えないって決めた私には、香奈を止めることはできない。
運動場のど真ん中で、そんなことを考えていると…応援とは違う、笑い声が聞こえる。
なんだろ…と、辺りを見渡す。
今は、借り物競走中。
よっぽど、変なことが書かれていたのだろうか…
「妹尾!」
ビク
「た…高橋先生、何してるんですか!?」
息が上がった高橋先生の姿は、フリフリのエプロンに、片手にはマイバックと紙切れが1枚。
誰が見ても驚く姿をしている。
「とにかく、来い!」
と、泰葉の腕をひっぱり走り出した。
「せ…先生!?」
泰葉は何が何だかわからず、ただ引っ張られているだけ。
周りからは、歓声や笑い声…ブーイングの声が聞こえる。
[高橋先生、1着でゴールイン!続いては…]
「はぁ…はぁ…」
ゴールしたと思ったら、その場に寝転んだ先生。
いや…寝転んだというより、倒れたに近い。
「はぁ…先生、大丈夫ですか?」
顔を腕で覆い、呼吸を整えている先生の顔を覗き込む。
「あぁ、運動不足なだけだ…それか…歳かな…?」
そう言うと、ゆっくりと立ち上がり、背中についた砂を払い落とす。
フリフリなエプロンを泰葉に渡す。
「ちょっと、保健室で休んでくるわ。あ、妹尾。後で悪いが、冷たいお茶買ってきてくれ」
「はい!」
泰葉が返事をすると、右手をヒラヒラさせ校舎の中に入って行った。