ひなたぼっこ~先生の、隣~
自分の役目を終え、泰葉は自販機でお茶を2本買い、保健室へ向かう。
さっき、皆気になっていたから先生の周りにたくさん生徒いそうだなー…
と、思いながら廊下を歩いていると話し声が聞こえ始めた。
「先生!さっきの借り物競走に書いてあったことって何だったの?」
「教えてよ~」
保健室からだ。
ゆっくりと近付くと、保健室の扉が少しだけ開いている。
覗くように保健室の中を見ると、ソファーに寝転がった高橋先生の周りに、女子生徒が4人で囲んでいる。
やっぱり…
「…うるさいよ、お前ら。応援席戻れ」
めんどくさそうな、先生の声。
「先生がどうして泰葉を選んだのか知りたいの!それを教えてくれたら戻る!」
この声は…香奈?
もう一度、中を覗くと寝転がっている先生の背中をバシバシ叩いている。
このタイミングで入って行くとやばいよね…
それに、私も気になる。
紙に何て書いてあったのか…
「…はぁ」
先生の大きな溜息が聞こえたあと…
「妹尾が一番、無難だから」
…無難?
「…無難って?」
泰葉の代わりに、中にいる香奈が聞く。
「お前らみたいに、後からギャーギャー言わないってこと」
「あぁ!泰葉って何も言わないし、影薄いしね」
「本当、本当。妹尾さんって教室にいても、いるかわからないしね」
中から、笑い声が聞こえる。
その中には、香奈の声までー…
「で、本当に内容は何だったの?」
「うるさい…早く戻ってくれよ」
泰葉は手に持っていたお茶を、扉の前に静かに置く。
応援席に戻ろうー…
静かに、その場から立ち去った。