ひなたぼっこ~先生の、隣~
泰葉は真っ赤な顔のまま、俯く。
「早く、くっつけばいいのに」
その様子を見ていた香奈が、ボソッと言った。
泰葉はバッと顔を上げると、先生と目が合った。
が、すぐ逸らされた。
「…お前ら、もう帰れ」
先生が立ち上がりながら言い、机に向かう。
「なんでよ!?」
「もう完全下校の時間過ぎてるからだ」
「はぁ?まだ話は…」
「香奈、帰ろ?」
まだ文句を言おうとしている香奈を止めるように、泰葉の声が遮った。
先に立ち上がり、香奈の腕をひっぱり立ち上がらせる。
「ちょっと…泰葉…」
慌てて鞄を持ち、泰葉の後を追う。
扉に向かって歩いていた泰葉は、ゆっくりと振り返り、背中を向けている先生を見る。
「先生、さようなら」
「おう」
振り返りもせず、右手をヒラヒラさせている。
香奈は、納得いかないような顔をしている。
「先生の、臆病もの!」
そう言うと、思いっきり扉を閉めた。