ひなたぼっこ~先生の、隣~
しばらくすると、河川敷みたいな場所に車が停まった。
辺りは真っ暗。
「外の方が涼しいだろうけど、この時期は蚊が多そうだしな」
シートベルトを外しながら、先生が言う。
「そう…ですね」
泰葉も、シートベルトを外す。
車内は少しの冷房と、ラジオが流れている。
「俯くなよ…俺が悪いことしたみたいじゃん?」
「そんなつもりじゃ…」
バッと顔を上げ、運転席にいる先生を見ると、放課後にはなかったはずのシップが頬に貼られていた。
「あ…」
「あ?…これ?」
先生はシップを指差しながら、苦笑いをする。
「部活中の生徒の喧嘩を止めに入ったときにな…その後、色々やってたらこんな時間になっちゃって…」
頬をさすりながら言う。
「…」
「だから、お前がそんな悲しい顔すんなって」
そっと、泰葉の頬に先生の手が触れた。
ドキン
「ごめんな。今日、"気をつけます"って言ったばっかりなのに」
苦笑いしながら言う先生に、泰葉は小さく首を横に振る。
「…先生」
頬に触れられた先生の手を、上から包み込むように自分の手をのせる。