私と彼の関係
「嫌なところもあったけど、いつもそばにいてくれて。お兄さんみたいだったかな」


 そうののかちゃんは笑顔をうかべていた。


「一緒に花火を見に行ったり、海に行ったり。旅行とかも行ったかな」


 そのときの表情を見て、私は何も言えなくなっていた。


 すごく嬉しそうで、懐かしそうで。


 過去を思い出しているんだって分かった。


 彼女には宮野君との思い出がある。


 細かく語りつくせば、その思い出は一日や二日で語れないものだろう。


 でも、私は違った。私には彼との語れる思い出なんか何もないから彼女がうらやましかったのだ。


 彼女が聞かせてくれる思い出話には私の知らない宮野君がいたからだ。


 彼女はそんな二人の関係を示すためにそんな話をしたわけでないことは分かっていた。


 ただの日常会話として話をしてくれたんだろう。


 それでも私は言いようのない距離感を感じ、夕方前に家に帰ることになった。


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