私と彼の関係
 誕生日に一緒に花火を見たという思い出が、それに加えて一つでも多くの思い出がほしかったのだ。


「無理にとは。ダメならいいから」


「何時から?」


「七時から」


「六時に君の家に迎えに行くよ」


「いいの?」


「別にそれくらいならいいよ」


 思わず顔がにやけそうになるのを必死でこらえていた。


「人が多いから、早めがいいと思うの。五時くらい」


 でも、四時くらいでもいいかもしれない。せっかくデートできるのに花火を見るだけはもったいない。


「時間があるならもっと早くてもいいよ」


 私の心を見透かしたような甘い言葉に思わず反応していた。


 その日は浴衣を着ていきたかったので、あまり早い時間は難しそうだった。


 宮野君の場合、私が浴衣を着ようが気にはしないだろうけど、ほんのひとかけらでも可愛いと思われたかった。


「じゃあ、三時くらい」


「そんなに暇なんだ」 


 宮野君は少しあきれたように笑っていた。
< 163 / 235 >

この作品をシェア

pagetop