私と彼の関係
 私たちは少し早い時間に家を出ることにした。


 花火大会の近くの会場に行くと、辺りには多くの人が溢れていた。


 友達同士で来ている人もいれば、恋人同士できているひともいた。


 でも、私はあたりを見渡す余裕がなかった。


 慣れない草履に戸惑い、思わずつまずきそうになる。


 そのとき体を支えられた。


 そのとき、至近距離に宮野の顔がある。


 彼に抱き寄せられるようにつかまれたことに気づき、変な声を出すと、彼は目を細めて笑っていた。


「履きなれてないのに履いてくるから」


 彼にそう言われ、返す言葉もない。


 彼の手が私の体から離れる。


 今まで浴衣なんか滅多に着たこともなかったからだ。


 落ち込みかけたとき、目の前に手が差し出される。差し出したのは宮野君だ。
「迷子になったらいけないから」


 宮野君の出してくれた手をそっと握る。


 さっきよりも触れている部分はほんのわずかなのに、その彼の大きな手にドキッとしていた。なんだか恥ずかしくて顔をまともに見れなかった。
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