私と彼の関係
「さっきの場所まで送るよ。ここまで連れてきたのは俺だから。一人にしたら危ないし」


 私が彼の手を拒めるわけもない。彼の優しさに思わず口をかみしめると、彼のあとをついていくようにして歩き出していた。


 さっきの場所まで送ってもらい、彼と目を合わせずに別れを告げる。


 今、彼の顔を見るのが怖かったからだ。


「じゃあな」


 彼は私にそういうと、その場から遠ざかって行った。


 足音が遠くなるのを確認し、宮野君を見た。


 彼は振り返ることもなく、まっすぐ帰っていく。私はその後ろ姿を目で追っていた。


 振り返ってもくれないんだ。


 わかりきったことなのに胸がいたむ。


 こんなにぎやかな場所に一人でいるのが苦しくて、いますぐにでも帰りたかった。


 宮野君が信号にでも引っかかると、鉢合せをしてしまうかもしれないから、私は少し間をおいて帰ろうと決めた。


 そのとき、花火が打ちあがる。私はその音につられるように花火を見ていた。


 暗闇に現れた光が空を照らし出す。そのとき、辺りから歓声が漏れた。


 宮野君と一緒に見たかった。あと少しでも早く打ちあがってくれたら一緒に見られたのに。
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