私と彼の関係
 それに彼とそんなに会うこともない。多分、まともに話ができる唯一のチャンスが昨日だった。


 無理だと思っていても、彼が私を気に入ってくれて、何かアクションが起こることをどこかで期待していたのかもしれない。だが、知り合いだったのは私の両親であり、私ではない。


 体から芯が抜け落ちたような脱力感があった。まあ、勘違いはなはだしいことだけど。


 そのとき、視界に彼の通う高校の制服を着た人を見つける。


 せめて彼と同じ高校だったら、もう少しだけ事情も変わってきたのかもしれない。


 彼と同じ学校に通う人が羨ましかった。


「武井さん?」


 私が学校への道を急ごうとしたとき、そんな声が聞こえる。その声の主のことは知っていた。だが、まさかという気持ちが強かった。振り返ると、昨日見た彼の姿があった。

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