私と彼の関係
「いまさらそんなこと聞けませんよ。私から彼との関係を絶ったのに」


「少しは利己的になってもいいんじゃない? 別に相手の嫌がることを無理にしようとしているわけでもないし。



聞きたいことは我慢せずに聞いたほうがいいよ。一人で延々と考えるよりは答えが分かってすっきりするから」


 でもその答えが傷つくことだったら、知らないほうがいいってこともある気がする。


「帰ろうか」


 歩き出した彼を呼び止める。


「ごはんは食べないんですか?」


「宮野とのことを確かめたいだろう。俺と一緒にいるよりもさ」


「でも、今日は岸川さんと約束したから」


 その当たり前の言葉に、彼は目を細めて笑っていた。


「だから君はお人よしなんだよ。そういうところがいいなって思っていたんだけどね」


 彼からの二度目の告白めいた言葉は一度目の告白に対する戸惑いがうそのように、優しく穏やかでほんの少し息をつけるものだった。
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