私と彼の関係
 彼がより大きく目を見開いていた。


 あたりから音が消えた気がした。


 彼は髪の毛をかきあげると、眉根を寄せる。


「今、ここがどこか分かっている?」


「どこって駅……」


 その言葉で、私たちに向けられている好奇の視線に気づいた。


 この時間の、この場所で告白なんてしてしまったら、目立つに決まっている。


 私は動くことも、周りの人と目を合わせることもできなくなっていた。


 そのとき、宮野君が有無を言わせず 固まっている私の腕を引く。


 人の視線が刺さるように痛かった。彼が遠くを見て、あごをしゃくるのに気づいたが、彼が何を見ているのか確認する勇気もなかった。


 彼の足が止まったのはそこから少し歩いた住宅街が立ち並ぶ人気の少ない場所だった。


 彼はさめた目で私を見る。
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