私と彼の関係
 ちらほらと人の姿があるが、あるていどのざわつきが私たちの言葉をかき消してくれた。


 でも、さすがに駅はまずかったかなと思う。


 知っている人に聞かれている可能性もあるからだ。


「感じ方は人それぞれだよね。俺は君といて意外と楽しかったよ」


 宮野君が少しだけ笑っていた。


 好きといわれたわけでもないのに、心がほぐれるように嬉しくなる。


 彼と一緒にしたのは登下校と、数少ないデートと、あと勉強くらいなのに。


 あんなささやかな時間を彼が楽しいと思ってくれていたことが嬉しかったのだ。


「本当に?」


「そんなうそを吐いても意味ないし」


 彼の横顔を見ながら、にやけをおさえるために唇を噛んだ。


 私をつかんでいる力が一瞬強くなる。


「だから、今度は本当につきあおうか」
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