私と彼の関係
 私はその言葉の意味が理解できなかった。


「意味が分からないんだけど。だって、本当って。どうして」


 考えもしなかったことを言われて、頭が混乱してしまっていたのだ。


 そのとき、彼が私の肩をつかみ、そばに寄せた。


 彼の顔が私の耳元に来る。


 ドキッとする前に、優しい声が響く。


「好きだからだよ」


「好きって」


 大きな声を出しかけたとき、宮野君に口を押さえられた。


「だから、そうやって大声で。少しくらい落ち着いて物事を進められないのかと呆れるよ」


 口を押さえられ、いつも以上に密着し、どきどきするのが分かった。


 彼の手がやっと離れる。


「だって、宮野君は私のこと好きじゃないから、だから振りをしろって」


「まさか。嫌いな子にそういうことを言うわけないし」


「じゃあ、どうして?」


 そのとき、私たちの傍を若い女の人たちが通り過ぎていく。


「花火見るならそろそろ行かないと間に合わないよ」


 宮野君はまた私の手をつかんだ。


 彼に促され、歩き出した。
< 214 / 235 >

この作品をシェア

pagetop