私と彼の関係
「俺の家には君の家の合鍵があるんだよ。誰かさんが鍵をなくしたりとか、緊急時のためということで」


 一言も聞いていません。家の鍵を他人に預ける神経もどうにかしていると思うけど。それだけ彼の両親が信頼できて、私のことを心配だということなんだろうか。


「絶対に来ないでくださいよ」


 寝起きの姿なんて見られたくない。絶対に。だから、絶対の部分を強調した。


「じゃ、決まりな」


 彼はそう勝ち誇ったように微笑む。私には拒否権なんてないと告げているような自信に満ちた笑みだった。


 ありえない。でも…。


 私の体に影がかかる。私の前に大きな手が差し出される。


 彼を見ると、優しく微笑んでいた。さっきまでの自信に満ちた笑みとは程遠いような優しい表情。私が大好きな彼の笑顔に否応なしに胸の鼓動が速くなる。


「鞄を持ってやるよ」


 手を差し伸べた彼に鞄を渡した。


 でも、こういう時間はすごく恋人らしくて、いいなと思ってしまったのもまた事実だった。




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