私と彼の関係
 そんな乙女心に気づいた様子もない父親がチャイムを弾く。


 清閑な住宅街にチャイムの音が響いていた。


 インターフォンが鳴り、私が心の準備をする前に人の声が聞こえてきた。


「宮野ですけど」


 どこかあどけなさの残る、それでいて低い声にドキッとしていた。


 いつか通りすがりのように聞いた、それでいて耳の奥に残っているような声。


 そう認識すると、心拍数は余計に高まっていく。


 父親が名前を名乗ると、「待っていてください」との声が響いていた。


 すぐに玄関が開く。そして、その玄関の隙間から一人の男の人の姿が確認できた。


 さらさらの黒髪に、無表情でいると冷たい印象を与える瞳に整った顔をより冷たく見せている長い睫毛。通った鼻筋。


 具体的にどこが整っているかということを言ってもきりがないくらいある。
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