ばーか、だいすきだよ。
「いや!!」

どこからか聞こえてきたちっさの声。


「!!」


わたしはスクバを持って教室から出る。

そして廊下を、一直線に駆け抜ける。

中央階段の角を曲がった、少し奥に、ちっさと松永アツキはいた。


――一瞬、思考回路が止まった。

壁に向かって、ちっさは責められている体制になっていた。

…松永アツキに。


「…っ」


ちっさは松永アツキを突き飛ばして、わたしの背中に隠れたんだ。


「…ちっさ…?」


ちっさの目からはキレイな雫が流れ落ちた。

…ああ、まるであの日みたいだね。

泣いてるあなたに、わたしはかける言葉が見つからないんだ。


でも今は――


「…キス…されたの…?」


心臓が、大きく波打つ。

ドクン、ドクンと唸っているのがわかる。


「…」


ちっさは小さく頷いた。

その時――



わたしの中の何かが音をたてて切れた気がした――

< 11 / 24 >

この作品をシェア

pagetop