ばーか、だいすきだよ。
「おい、オマエ。俺の後ろ歩けよ」


その日は雨が降っていた。

黄色い傘が、2つ並んでいた。


「な、なんで?」


焦って、驚いて聞き返す。

意味不明。意味がわからなかったから。


「おれの方が偉いからに決まってるだろ」

「りゅ、竜晴くん、ひどい!!」

「別にひどくない!当たり前のことだろ」


毎日歩く、帰り道。小学校の通学路。

そうだなー、低学年の時だ。



「ちっさには、そんなこと言わないのに!」


「ばーか!千沙紀は女だろ!」


「由宇だって、女の子だよ!」


「オマエなんか女じゃねえよっ」



吐き捨てるようにそう言った、由宇の前に歩く男。

竜晴くん。

同じクラスの未央子ちゃんが、コイツのこと”好き”って言ってた…


心底理解しがたいなぁ、未央子ちゃん…。


ちっさもいつも、由宇に竜晴くんの話する時

顔紅くして、視線を低くして、ほっぺに両手をあてるんだ。

「竜晴くんきらい!だいっきらい!」

って由宇が言ったら


「そんなことないよ。優しいよ」

って。



心底理解しがたい、うそじゃない。

竜晴くんなんてきらいだよ…。
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