ばーか、だいすきだよ。
「神田ー、ちょっと来てー」

昼休み、ちっさはクラスの男子に呼び出された。

そのまんま廊下に出たかと思うと――



「二年三組の松永アツキ、だな」

すぐ後ろから声がした。

「なーんだ、リュウか」

リュウがあんまり神妙な声で言うから。

わたしはなんだか緊張する。


別にリュウが好きだから、とかじゃない。

ただ――


「千沙紀はあんなやつに引っ掛かんない…と、思う」

わたしもリュウも、ちっさの心配をしてるだけ。

ちっさの病気が分かった、四年位前からかな。


「性格は?マツダくん?だっけ」

「ちげーよ、松永アツキ!!…まぁまぁじゃねーの」


リュウの視線が、瞳の奥が。

廊下の向こう、見えないちっさえを見続ける。




「…ばーか、竜晴」

わたしがボソッと呟いたのを、リュウは聞き逃さなかった。

「はぁ?!なんでだだよっ」

身を乗り出してわたしを見る、リュウが――


「もー!なんで分かんないかなー?そこがバカ!だってんの」


「意味わかんねーよっ」


「ガキっ!!!!」



リュウが―――

なんでだろ、直視できなかった

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